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横浜遊学記



3:豊か過ぎる時代に生きる代償

3:豊か過ぎる時代に生きる代償_e0026795_22575879.jpg今日は美容院でシャンプーについての話を聞いてきました。僕は来年から家庭用消費財メーカーに勤めるとこになっているのですが、会社に所属している身分で資本主義社会において正義を貫くのは本当に難しいだろうなと想像するに難くなかったです。いやそもそも、資本主義社会においての正義は"より大きな利益をあげること"ですが。
 
仕事を始めて1年・2年と経っていったときに今日考えたことをちゃんと覚えていられるかな。求める理想と、自分が追い求めなければならないもののギャップに悩むことが、資本主義社会にPlayerとして存在する者の義務なのかもしれませんね。

いつもお世話になっている美容院では、天然素材をベースに排水したとき自然分解される物質のみを使って製造されたシャンプーを使っているそうです。500ml(だいたいみなさんのバスルームにあるサイズです)で1500円と高額なのですが、グループの代表の意向でシャンプーはすべてそのタイプのもので統一されているそうです。

なぜこんなに高額かというと(ドラッグストアで買えば1/5~1/3程度の値段で代替できる商品がありますよね)、製造過程において、大量生産を可能にした魔法の素材である"石油"を一切使用してないからだそうです。そもそも①人間の髪と油脂成分の相性はあまりよくないらしく、洗うこと自体が髪にとっては負担なのだそうです。(シャンプーは頭皮の汚れを落とすためにあるのに、髪の毛そのものを洗うためにあると誤解している方が多いとも聞きました。)

上の事実を考慮したうえで、実際にどれくらいの頻度で髪(頭?)を洗えばいいのかと聞きました。すると②「3日に一回も洗えば十分じゃないかな」という答え。

①や②といった事実を積極的にマスに対してコミュニケートする企業はおそらくないでしょう。企業が"売り上げを伸ばす"という目標を持って活動しているという前提ならば、マスに対してコミュニケートすることが優先される事柄はもっとたくさんあるはずだし、企業が持つコミュニケーションの目的は"正しいことを伝えること"ではないからですね。企業が消費者に対して啓蒙を行うときとは、
1.自社商品に関するポジティブキャンペーン
2.競合商品に対するネガティブキャンペーン
…のどちらかしかありませんよね。
 
企業としては、できる限り安く作ったものをできるだけたくさん売りたい。
すごくシンプルな行動原理。
そして僕達も、出来るだけ良いものを安く買いたいと思っている。
こっちもすごくシンプルな行動原理。

その二つの意図が市場で出会う時にいろんなものが見えなくなる。きっとかつてないくらいに多くの選択肢を与えられながら、実は目の前に用意されたその選択肢の中に真にベストって答えは無いような感覚に囚われます。僕らが自分達に都合の良いものを選び続ける限りそこに選択肢は生まれ続けるけれど、僕らが資本主義社会における消費者という名の王座に座り続ける続けるかぎりは、本当のことを知るってことがひどく難しくなってるって自覚していなければなと思いました。都合の悪い話は耳に入ってこない。さながら裸の王様です。
 
この情報の非対称性こそが僕達の支払っている代償だと思います。だって選択肢が一つしかなかったら、嘘をつく必要も安さを求める必要もないですからね。だからといって市場が寡占または独占された状態だということは何も保障してくれませんが。倫理的な正しさと資本主義の正義をどこまで調和させられるのか。

授業でやったケースの中にあった、調味料の口の穴の数を少しずつ増やすことで売り上げを伸ばした食品メーカーとか、練り歯磨きの消費量が減るから小さなヘッドの歯ブラシを出せなかった大手消費財メーカーの話を思い出しました。でも実のところ、そんな生き馬の目を抜くような競争の世界に惹かれてる部分もあったり。
 
1年後、日常生活で消費者と企業人の二役をこなしながら僕は矛盾に悩むのでしょう。

*写真「東京証券取引所」

 
 
by yokohama-yugakuki | 2005-07-21 01:31 | ⑥Issue
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